鍼灸に副作用(副反応)はあるのか?
世間では、東洋医学は西洋医学の薬や手術などと比べると副作用(副反応)がないというイメージが強いと思います。
はたして、そうでしょうか?
一般の方は、鍼灸業界の学術雑誌には、鍼灸のリスクなど研究者の発表が誌面をにぎわしていることをご存知ないことと思います。
鍼灸治療に対して、いかにリスクを防ぐか!ということが大切なのです。
西洋医学の治療薬や漢方薬には添付書が入っていて、使用上の注意や副作用などが記載され、医学界では今や常識になっています。
このような現状の中で、東洋医学の世界では、治療後に起こる一時的な倦怠感や症状悪化を 『瞑眩』(めんげん) として、症状好転の兆しありで良いことであると解釈する傾向があります。
少し乱暴な例えですが、鍼は細い針金を身体に刺し入れる、また、お灸はゴマ粒くらいの軽い火傷を作る、マッサージなどは軽い筋肉の打撲を生じさせる…軽いダメージを与えながら身体の回復力を待ちます。
治療後には筋肉も緩み血管も拡張して体温も上がります。
軽い運動後のような体調になります。
そのために、半日~2日くらい『瞑眩』が起きることがあります。
鍼灸は、薬で症状を強制的に抑え込む効能ではなく、正常に戻る力(自然治癒力)を旺盛にする治療法だからです。
効いた!治った!という鍼灸治療の有利さだけをアピールすることだけではなく、副作用のようなデーターも公開できることが、より鍼灸治療を医学的な信頼できる治療体系までレベルアップできるものと思っています。
鍼治療の副作用
参考文献 山下 仁ほか、鍼灸の副作用。医学のあゆみ 196:765-767,2001
※100人の違う患者が受療した場合、何人に発生するかの目安
※※鍼を100回刺した場合、何回発生するかの目安
鍼は、古来より『気を整える』といわれています。
みなさんも、鋭利な刃物の刃先をじっ~と見ていると、ゾクゾク!(+_+) と 鳥肌がたったり、息を呑んだりしませんか?
鍼先も鋭利ですよね。
気持を集中させる作用があるかもしれません。
ですから、使い様によっては、副作用が発生しやすいのではないでしょうか?
灸の副作用
過去の灸の副作用に関する国内文献調査では、灸痕から発生した皮膚癌が9例、水泡性類疱瘡が5例報告されています。
この全報告から、かなり大きな灸(小大豆状)を連続してすえ続けた結果だと思われます。
実際、鍼灸師がおこなう灸治療は、米粒の半分~ゴマ粒の大きさです。
このくらいの大きさならば、全く問題はありません。
(当院では、漢方薬の火傷の薬を皮膚に塗った上から、ゴマ粒状の灸をします。痕は、まったくつきません。ご安心ください。)
また、重症の糖尿病、ステロイド剤を多量に服用している方、免疫抑制剤を服用中の方なども、生体の免疫力が極端に低下しているため、注意した方がよいと思います。
その他は、灸に関しての副作用の報告は見当たりません。比較的灸は、副作用のない治療法といえるかもしれません。
副作用が起こりやすい身体の状態は?
全身の副作用(副反応)
- 鍼灸の刺激が強すぎた場合
- 初診時に患者様側が過度の緊張感がある場合
- 過労や睡眠不足
- 神経症(心気症):身体の些細な変化が気になる方
- 春先などの気圧の変動時
- 低血圧(収縮期血圧100以下、拡張期血圧60以下の方)
- 喘息などアレルギーのある方
- 甲状腺の病気がある方
- 術後の体力低下時
- 汗をかきにくい体質
- 月経1週間前後
- 自律神経の不調時
- サービス過剰で長すぎる治療を受けた後 に起こりやすいと思います。
局所の反応
- 鍼灸師が粗暴な技術を行った時
- ワーファリンなどの血液を凝固させない薬や鎮痛剤・安定剤・抗うつ薬を常用されている方
- 不妊症等でホルモン療法を実施している方
- 過去・現在に抗がん剤を使用した方
- 金属アレルギーの方
- 老齢で血管のもろい方
- 筋力が弱く浮腫みやすい方 など 内出血を起したり、皮下血腫になりやすい傾向があります。
特に薬物療法を数週間単位で実施された方は、服用が終わっても 身体はまだ正常に戻っていません。
ですから数週間~数か月は、局所反応が起こりやすい可能性があります。
また、最近流行の美容鍼は、顔面部の内出血、皮下血腫、毛穴の炎症が起きやすいために、体質、肌質などを見極めた刺鍼が必要になります。
以上、全身性副作用、局所の反応は、熟練した鍼灸師が診たてることができれば体質などの問題による副作用は避けて通ることができます。
しかし、薬物を飲用されてる患者様の副作用は避けることは困難なことが多いです。(初診時に、服用されているお薬をお知らせ下さい)
治療後の過ごし方で、また調子が悪くなる方もいます
治療後は、新陳代謝が改善され、風邪の引き始めのような体調になります。
免疫が高まり、血管、汗腺も広がります。その時に、エアコンの冷気、扇風機の風などを患部に当てたりすると、急速に冷やすことになり筋肉がこわばることがあります。
筋違いを起しやすいのでご注意をお願いします。
痛みが楽になったということで、また動かれると、症状がぶり返してしまいます。安静が必要です。
治療後 アルコールなどは、患部が充血するために 酔いが醒めてからが、筋肉が冷えて浮腫みが生じ自覚症状が増すことがあります。
飲酒後の症状悪化は自己責任ですので ご注意をしてください。
【鍼灸治療後の違和感について】
鍼灸治療の副作用を述べましたが、普通の体力があれば、一時期(2~3日)の違和感、見た目などの不都合はありますが、症状がひどくなったり、回復が遅れたりすることは、いっさいありません。
手術や薬物と比較にならないほどの安全な刺激で生体反応を起こさせることができます。
刺激とは…身体の変化を起こさせることです。
その結果として身体を治りやすい環境をつくりだし、回復力を助けていくのが東洋医学の理論になります。
運動不足の方が急に運動をし始めると、その後、筋肉痛がおこることが多いと思います。
しかし、その後も運動を続けて行くと、運動の負荷に慣れ、筋肉痛がおこらなくなり、より強い運動ができるようになります。
運動時の筋肉痛=鍼灸の違和感だと思って下さい。
その結果、心身も病気に負けない体つくりができ、健康維持に役立つのです。
もし、再診時に治療後の違和感が気になるようでしたら治療時にお申し出ください。
刺激方法や刺激量を加減していきます。